画像で見る聖書の歴史
資料編9
ライランズ パピルス
日本聖書協会 前総主事 佐藤邦宏

 このコラムでは、聖書の歴史資料、写本、翻訳等を画像でお目にかけようと思います。それはわくわくするような世界です。さらに聖書を身近に感じていただいて、お読みになりたいという意欲をお持ちいただきたいと願ってお届けいたします。
 なお、わたしは、これらの画像の内、68ほどをオーバーヘッド プロジェクター(OHP)のフィルムにして、多数の方々に、ご説明しながらご覧いただけるようにしています。ご利用いただければ幸いです。なお、この文の最後にご案内を掲載いたしますので、よろしければご利用ください。

9 ライランズ パピルス
ライランズ パピルス
 聖書は、最初羊皮紙に手書きで書かれていましたが、やがでナイル川畔に生えているパピルスを用いて作られる初期の紙に書かれるようになりました。それも両面に書かれるようになり、綴じて現在の本のような形にして用いられるようになりました。キリスト教会は、いち早くこれを取り入れ、この綴じ本は、羊皮紙の巻物、スクロールに対して、コーデックスと呼ばれています。
 1930年代の初期、エジプトで購入された、たくさんのパピルスの断片の中から、英国で発見されたのが、この「ライランズ パピルス」と呼ばれるものです。それは1934年、英国マンチェスターのジョン ライランズ図書館においてのことでした。大きさは、わずか7センチ足らずですが、2世紀初めに書かれたギリシア語によるヨハネ福音書の一部でした。両面に書かれていて、片面には、ヨハネ福音書18章31〜33節、他の面には同18章37〜38節が書かれていました。画像の聖句は前者のものです。120年から150年頃の間に書かれたものだと伝えられていました。
 この発見は、聖書研究者や考古学者たちの興味をひき、人々は一斉にエジプトへ出かけ、それこそパピルス狩りを始めたのです。それで、次回ご紹介をしますチェスタービテイ パピルスを始め幾つかのパピルスに書かれて聖書の断片が発見され、失われた聖書の原本を再生するのに大いに貢献したものです。このようなパピルスの名称は、現在それが保存されている図書館、博物館の名によるものです。例えば「ライランズ パピルス」は、ライランズ図書館が所有し、保存していると言う意味になります。
 前にもご紹介しましたが、「ネストレ・アーラントギリシア語新約聖書(第26版)」序文にクルト・アーラントはこう書いています。
「(前略)この本文は、数々のそして大変重要な点において「ウエスコット・ホルト」の本文と異なっている。その上写本の全体状況の評価は、彼らの時代以来決定的に変化している。「ウエスコット・ホルト」の作業のための写本の基礎は4世紀以後のものである。(中略)今日初期のパピルスは、紀元200年ころの本文の幅広い証拠を提供している。しかもこれらはギリシア語の証拠である。(中略)「ウエスコット・ホルト」と「ティッシェンドルフ」の時代は、確かに過ぎ去ってしまった」(翻訳 日本聖書翻訳研究会)
 1991年9月、わたしはドイツ・ミュンスター大学にある「新約聖書本文研究所」にクルト・アーラント博士をお訪ねする機会を得ました。研究所に着くと、博士を待つ間、展示物を拝見することができました。するとどうでしょう。「ライランズ パピルス」の写真が展示してあり、その説明に「120年に書かれた」とあるではありませんか。日本を出る時は、たしか「120〜150年に書かれた」とあったのを記憶していたわたしは、早速博士に質問してみました。博士の答えはこうでした。「現代は科学技術が進んで、炭素の同位元素の衰退状況を測定することで、1年ほどの誤差で年代を特定できるので、最近測定して、120年と特定したのだ」とのご説明でした。
 そうであるなら、「ヨハネ福音書」が書かれたのは、90年代の終わり頃書かれたと伝えられていますから、最初の「ヨハネ福音書」から、直接書き写された可能性も少なくないことになります。写本は、写された回数が少ないほど正確なものに近く、今日わたしたちは、このようなパピルスを通して、最初の聖書、その幻の原文により近づくことてができるようになったのです。

ご案内
 OHP化した資料のリスト差し上げます。メールで、添付資料としてお届けいたします。テキストは、マイクロソフトのワードです。これは無償でご提供いたしますので、お申し付けください。
 わたしは、だきるだけ多くの皆様に、聖書のすばらしい歴史、そして聖書の言葉を正確に伝える努力を知っていただきたいために、OHPとして分かり易いものにいたしました。今まで、180ほどの教会、50ほどの学校にお招きいただきましたが、わたしのひとつの召命として、聖書への関心の高揚心の普及に取り組んでまいりたいと思っています。ご利用いただければ幸いです。
2002.Jan.25
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